介護福祉士のやりがいとは

介護とは体のケアだけをするものではありません

介護業界においては、就職をして1年以内に約半分の人が離職をしていると言われます。
しかしその一方で介護の仕事を10年以上も続けるベテラン職の人もきちんと存在しています。
介護の仕事は他の仕事と比較して決して待遇面で恵まれたものではなく、給与に対しての仕事の内容ということでいけば「楽に多く儲けることができる仕事」とは言えません。

介護の仕事を長く続けることができている人に共通しているのが、介護職そのものに対してプライドを持ち自分なりのやりがいをしっかり確立することができているということです。

高齢者を遠い存在に感じている人にとっては「介護」は心身の障害や老化によって日常生活に不自由が出てしまった人に対して、その不自由さを解消するために手伝いをするだけの仕事のように思えます。

そのためともすると介護という仕事を「誰にでもできる」という軽いものと思ってしまうところですが、家庭内で家族の面倒を見るということではなくプロとして介護をする場合には決して「誰にでもできる」わけではありません。

仕事として行う介護においてはその業務は本人の健康管理だけでなく、その中で自立支援を進めたり社会活動をしていくことができるような援助なども行います。

介護とは「生きる」ことを支援すること

そもそも「介護」という言葉の意味から説明をすると、「注視して守護する」ということになります。
ですので「介護をする」というのは身の回りのお世話をするということではなく、その人がその後の人生を生きていくために必要な護りをしていくということになります。

人が生きていくということは単に呼吸をして心臓を動かすということではなく、自分で自分のことを管理したり、自己実現のための活動をしていくことまでもが含まれます。

介護福祉士となるために勉強をするときにはこの本当の意味での「生きる」をどう実現していくかということについて、実際の介護の方法とともに心理面や社会とのつながりを学びます。
具体的には身体的生活援助とともに、文化的生活援助をしたり、社会的生活援助などをしていくということです。

単純な身体への介護をしているだけのときにはどんどん体が弱くなっていってしまう高齢者も、自己実現のための援助支援をしていくことで再び意識を取り戻し、本当の意味での元気を得ることができたりします。

介護福祉士としてのやりがいはまさにそうしたところにあり、高齢や障害によって思うように自由な活動ができなくなってしまった人に対し、それまでと同じように日常生活の中から楽しみを見つけることができるようにしてあげるのがプロとしての勤めです。

介護で変わりつつあること

近年はどんな状態でも長く生きるという考え方から、残された時間を有意義なものにするという考え方にシフトしています。
そこで注目されたのが看取りです。
看取りとは「近い将来、死が避けられない人に対して、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最後まで尊厳のある生活を支援すること」と全国老人福祉施設協議会の看取り看護フォーラムで定義されています。
看取り介護とは、要介護状態を改善・維持を目的とした介護ではなく、本人ができるだけストレスなく、自分らしく最後を迎えるための介護といえます。
似た言葉にターミナルケアがありますが、ターミナルケアは終末医療と訳される通り、終末期の医療および介護のことです。
看取り介護との違いは医療行為があるか否かなので間違えないようにしましょう。

看取り介護の実施内容

看取り看護では以下のことを行います。

食事

利用者が望むように食べ物や飲み物を提供します。健康状態を見て無理に食べさせるのではなく、利用者の意向を把握し介護していくことが大切です。

衛生面

入浴が好きな利用者には、負担のかからない範囲で入浴のお手伝い。入浴が難しい場合は、手浴や足浴をし、頭髪や口腔ケアなど清潔に過ごせるよう援助します。

排泄

排泄は利用者の健康状態を知るための大事な情報です。排便・排尿の量や回数を観察し記録します。衰弱が進むと便や尿の回数が減りますが、医師との相談により、腹部のマッサージや下剤の使用を検討することもあります。
排泄の状態を観察し、利用者にあったケアが必要です。

身体面・精神面の苦痛緩和

利用者は身体の痛みや発熱、だるさなど身体面の苦痛と、死への恐怖という精神面の苦痛に襲われます。楽な体位にしたり、コミュニケーションをとったりと、苦痛を緩和できるようサポートします。

利用者・ご家族への説明と同意

看取り看護では、利用者やご家族の同意がなければ行えません。施設で行う看取り看護とはどのようなものかを説明し、納得してもらう必要があります。

死亡時の援助

利用者の危篤時や死後に応じたケアを行います。危篤の兆候が現れたら、医師やご家族へ連絡をします。

看取り介護の流れ

看取り介護の流れは以下の通りです。

入所・適応

施設に入所し、新たな環境に慣れてもらう期間です。看取り介護では利用者やご家族の要望を取り入れて最後の時の対応を確認します。

安定期

利用者の健康状態や死に対する考え方を共有します。人生最後の時まで自分らしい生活を送るための準備を行う期間です。

不安定・低下期

身体が衰弱していく段階です。利用者やご家族に現状を伝え、その後について計画を立てていきます。

看取り期

最後の時を迎える段階で、利用者本人が会いたい人に連絡を取ったり、看取り介護計画書への同意を取ったりします。
また、ご家族には亡くなった時の連絡手段やお葬式についてご相談し。看取りの際はご家族が同伴できるように手配します。

看取り後

利用者が亡くなった際、事前に相談してきたことを行っていきます。

ご家族への対応

日々、変化していく利用者の状態や介護内容について、ご家族へ定期的に説明します。
こまめな連絡・説明がご家族へのメンタル面でのサポートにもつながるので、非常に重要なことです。さらにご家族の希望をきいて、叶えることも介護士に求められます。
また、付き添いを希望するご家族に対して、寝具を用意し、利用する部屋の説明を行うなどの配慮が必要です。
危篤時においては、利用者へ言葉をかけたり、手を握ったりするなどのアドバイスを送ります。このような行為は、利用者だけではなく家族にとっても癒しとなるでしょう。
家族の中には利用者に対して厳しい態度を取る方もいらっしゃいます。そのような方に対しても理解し、見守るようにしましょう。

グリーフケアについて

グリーフケアとは、ご家族が亡くなったことで大きな悲しみを感じた方に対して、寄り添い支援しながら、悲しみから立ち直れるようにする心のケアのことです。
グリーフは英語で「悲嘆、悲しみ」という意味があります。日本では1970年代に研究され始め、2005年に起こった福知山線脱線事故をきっかけに認知されていきました。
グリーフケアは気分の落ち込みといったメンタル面の症状ではなく、睡眠障害や摂食障害などの身体的な症状を引き起こします。
介護現場の場合、利用者がどのような介護を受けて生活していたのかをお伝えし、ご家族が理解・納得されることで利用者の死を受け入れ、日常生活に戻るのを支援していきます。
利用者のいろいろな場面での写真や映像を残しておくと有効で、ご家族の心を癒してくれるでしょう。

介護施設または提携葬儀社で葬儀を行う

看取り介護でなくても高齢者が利用する老人ホームでは、毎年4万人もの人たちが老人ホームで息を引き取っているそうです。
その後、老人ホーム内で葬儀が行われます。長い間、老人ホームで生活しているため、住み慣れた場所で葬儀を行ってもらいたいと希望する方が増えているためです。
葬儀については親しい人に限定し、小規模で行われる家族葬を選択する家庭もあります。

また介護施設によっては提携している葬儀社に任せることもできます。そうした場合、一般葬儀だけではなく、社葬やお別れ会といった形式を選ぶことも可能です。

ただし事前に施設で葬儀が可能であるか、葬儀社が施設内での葬儀が可能か確認しておく必要があります。

介護士としての心構え

看取り介護についてお伝えしていきましたが、介護士として看取り介護を行うことに不安があることでしょう。
不安を軽減するための心構えを解説します。

通常の介護とは異なる

看取り介護は、通常の介護ではしないことを行う場合があります。嚥下力(えんげりょく)の低下した利用者の好きな食べ物を提供したり、通常の介護だと無理なバイタルでも入浴介助をしたりします。
通常の介護では行わないため「こんなことをして大丈夫なのか?」と思う場面も少なくありません。しかし、看取り介護では安全よりも利用者やその家族の満足度が重要になってきます。
終末期を迎えた利用者の状態にあわせて寄り添い、苦痛を取り除くというケアが看取り看護です。

死を受け入れる

入所期間が短くても、同じ時間を過ごした利用者が亡くなられると虚無感に襲われる介護士は多くいます。
とくに身近な人の死を経験していない若い職員はその傾向にあるため、死を受け入れる心の準備が必要です。

看取り後の情報共有

看取り後、自分のよかったと、不安、辛さなどを振り返り、共有することが重要になってきます。
利用者が亡くなると、担当者は自分を責めてしまいがちです。振り返り、共有することで今後の看取り介護だけではなく、自分への心のケアにもなります。

看取り介護について解説しましたが、看取りにかかわることは大きな不安があるでしょう。
その不安を解消するには看取りの知識を増やし経験していくしかありません。不明なところがあれば自分で調べて、先輩介護士にきくことも必要でしょう。
また、利用者が安らかな最期を迎えるお手伝いするというやりがいはありますが、精神的な負担があるのも事実です。
辛い気持ちは抱え込まずに介護士もメンタルケアを受け、穏やかな気持ちで介護できるようにしましょう。

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